【借金返済】マンションの管理費などの積立金はだれのもの?

書簡
言及
御解約

主文

一破産者株式会社榮高破産管財人aの本件控訴を棄却する。
二原判決の主文第二項を取り消す。
三1破産者株式会社榮高破産管財人aとアンバサダー六本木管理組合法人との間において、別紙預金目録1、7及び14の各定期預金債権がアンバサダー六本木管理組合法人に属することを確認する。
2株式会社三和銀行は、アンバサダー六本木管理組合法人に対し、金一八二一万二九六〇円及び右金員のうち、別紙預金目録1、7及び14のそれぞれにつき、各元本額欄記載の金員に対する各預入日欄記載の日の翌日から支払済みまで各利率欄記載の割合による金員を支払え。
四1破産者株式会社榮高破産管財人aとルイマーブル乃木坂管理組合法人との間において、別紙預金目録8ないし11の各定期預金債権がルイマーブル乃木坂管理組合法人に属することを確認する。
2株式会社三和銀行は、ルイマーブル乃木坂管理組合法人に対し、金一〇〇〇万円及び右金員のうち、別紙預金目録8ないし11のそれぞれにつき、各元本額欄記載の金員に対する各預入日欄記載の日の翌日から支払済みまで各利率欄記載の割合による金員を支払え。
五1破産者株式会社榮高破産管財人aとジャルダン元麻布管理組合との間において、別紙預金目録6の定期預金債権がジャルダン元麻布管理組合に属することを確認する。
2株式会社三和銀行は、ジャルダン元麻布管理組合に対し、金四一八万四〇〇〇円及びこれに対する別紙預金目録6の預入日欄記載の日の翌日から支払済みまで利率欄記載の割合による金員を支払え。
六1破産者株式会社榮高破産管財人aとアルベルゴ上野管理組合法人との間において、別紙預金目録5及び15の各定期預金債権がアルベルゴ上野管理組合法人に属することを確認する。
2株式会社三和銀行は、アルベルゴ上野管理組合法人に対し、金四八八万六三〇七円及び右金員のうち、別紙預金目録5及び15のそれぞれにつき、各元本額欄記載の金員に対する各預入日欄記載の日の翌日から支払済みまで各利率欄記載の割合による金員を支払え。
七1破産者株式会社榮高破産管財人aと赤坂ベルゴ管理組合との間において、別紙預金目録13の定期預金債権が赤坂ベルゴ管理組合に属することを確認する。
2株式会社三和銀行は、赤坂ベルゴ管理組合に対し、金三一五万二二六八円及びこれに対する別紙預金目録13の預入日欄記載の日の翌日から支払済みまで利率欄記載の割合による金員を支払え。
八1破産者株式会社榮高破産管財人aとアルベルゴお茶ノ水管理組合法人との間において、別紙預金目録12の定期預金債権がアルベルゴお茶ノ水管理組合法人に属することを確認する。
2株式会社三和銀行は、アルベルゴお茶ノ水管理組合法人に対し、金六九三万四九九一円及びこれに対する別紙預金目録12の預入日欄記載の日の翌日から支払済みまで利率欄記載の割合による金員を支払え。
九訴訟費用は、破産者株式会社榮高破産管財人aと株式会社三和銀行との間においては控訴費用を破産者株式会社榮高破産管財人aの負担とし、アンバサダー六本木管理組合法人、ルイマーブル乃木坂管理組合法人、ジャルダン元麻布管理組合、アルベルゴ上野管理組合法人、赤坂ベルゴ管理組合及びアルベルゴお茶ノ水管理組合法人と破産者株式会社榮高破産管財人a及び株式会社三和銀行との間においては第一、二審を通じて破産者株式会社榮高破産管財人a及び株式会社三和銀行の負担とする。
一〇この判決の第三項ないし第八項の各2は、仮に執行することができる。

事実

第一当事者の求めた裁判

(原審甲事件)
一破産者株式会社榮高破産管財人a(以下「一審原告」という。)の控訴の趣旨1原判決の主文第一項を取り消す。
2株式会社三和銀行(以下「一審被告」という。)は、一審原告に対し、金五七二一万五五二六円及び右金員のうち別紙預金目録記載1ないし15のそれぞれにつき各元本額欄記載の金員に対する各預入日欄記載の日の翌日から平成六年五月二五日まで各利率欄記載の金員を、同年五月二六日から支払済みまで年六分の割合による金員を支払え。
(一審原告は、当審において、遅延損害金の請求を拡張した。)
3一審原告の一審被告に対する請求について生じた費用は、第一、二審とも、一審被告の負担とする。
4仮執行の宣言
二控訴の趣旨に対する一審被告の答弁
1一審原告の控訴を棄却する。
2控訴費用は一審原告の負担とする。
(原審乙、丙、丁、戊、己及び庚事件)
一アンバサダー六本木管理組合法人、ルイマーブル乃木坂管理組合法人、ジャルダン元麻布管理組合、アルベルゴ上野管理組合法人、赤坂ベルゴ管理組合及びアルベルゴお茶ノ水管理組合法人(以下「参加人ら」と総称する。)の控訴の趣旨
1主文第二項ないし第八項同旨
2参加人らの一審原告及び一審被告に対する請求について生じた訴訟費用は、第一、二審とも、一審原告及び一審被告の負担とする。
3仮執行の宣言
二控訴の趣旨に対する一審原告の答弁
参加人らの本件控訴を棄却する。
三控訴の趣旨に対する一審被告の答弁
1参加人らの本件控訴を棄却する。
2控訴費用は参加人らの負担とする。

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第二本件事案の概要

本件は、参加人らのマンションの管理者であった株式会社榮高(以下「榮高」という。)が区分所有者から徴収した管理費等を原資とする別紙預金目録番号1ないし15記載の定期預金(以下「本件各定期預金」という。)の帰属を巡る訴訟である。
本件各定期預金は、榮高が一審被告に預け入れたものであるが、一審被告は、一審原告に対する貸金債権と本件各定期預金返還債務とを相殺し、残額を榮高に弁済した。
一審原告は、本件各定期預金は榮高に帰属するが、区分所有者から徴収した管理費等は区分所有者から受託した信託財産であるから、一審被告がした相殺は無効であると主張し、一審被告に対して本件各定期預金の支払いを求めている(原審甲事件)。
参加人らは、原審甲事件に独立当事者参加して(原審乙、丙、丁、戊、己及び庚事件)、本件各定期預金の一部のものについて、参加人らに帰属すると主張して、一審原告に対してはその旨の確認を求め、一審被告に対してはそれぞれその支払いを求めている。
原判決は、本件各定期預金は榮高に帰属するから、その返還債務は相殺及び弁済によって消滅したと判断して、一審原告及び参加人らの各請求を棄却したので、一審原告及び参加人らが控訴した。

第三当事者の主張

(原審甲事件)
一請求原因(一審原告)
1榮高は、株式会社豊栄土地開発(以下「豊栄土地開発」という。)が建築、分譲するマンションの管理業務を目的として昭和五〇年九月九日に設立された同会社の子会社であり、参加人らのマンションの管理業務を行っていた。
榮高は、平成四年一一月三〇日、東京地方裁判所において破産宣告を受け(同裁判所平成四年〓第三六四四号事件)、同日一審原告が破産管財人に選任された。
2榮高は、一審被告(京橋支店取扱い)との間で、次のとおり定期預金契約を締結した。
すなわち、榮高は、一審被告(京橋支店取扱い)において、参加人らのマンション及びその他のマンションの管理費等を原資とする榮高名義の普通預金口座をそれぞれ開設して、管理費等を徴収して管理を行っていたが、さらに、右各普通預金の管理費等の剰余金を一審被告
(京橋支店取扱い)に送金し、同支店において各マンションごとに、別紙預金目録の1ないし15の各口座開設日欄記載の日に右目録1ないし15のとおり定期預金契約を締結した。
このうち、別紙預金目録1ないし11の定期預金については、原資の出捐者とされる管理組合のマンション名が預金名義に付記されている。
また、目録12の定期預金は榮高名義であり、目録13ないし15の定期預金の名義は不明であるが、いずれも、過去において原資の出捐者とされる管理組合のマンション名の付記された預金が書替継続された預金である。
本件各定期預金は、利息元加方式で自動書替継続され、最終的には右目録1ないし15の各預入日欄記載の日に各該当元本額(合計五七二一万五五二六円)が各該当満期日及び利率の約定のもとに預け入れられた(以下、右目録1ないし15の各定期預金を「目録1の定期預金」のようにいう。)。
本件各定期預金の預金通帳及び銀行届出印鑑はいずれも各定期預金契約締結以来榮高が保管している。
3本件各定期預金は法的、形式的には榮高に帰属しているが、実質的には参加人らに帰属するものであり、榮高に信託された信託財産である。
すなわち、本件各定期預金は、各区分所有者(委託者)が、榮高(受託者)に、マンションの管理・修繕等の目的(信託目的)に従って、参加人ら(受益者)のために管理(銀行預金とする等の運用その他)・処分(マンションの管理費用、修繕費用等のための支出)をさせるべく、使途を限定して預託した(信託行為)信託財産であり、榮高の固有財産とは独立した財産として把握されるべきである。
4一審原告は一審被告に対し、平成六年五月一八日到達の書面によって、本件各定期預金を右書面到達の日から一週間以内に解約・払い戻すよう催告した。
5よって、榮高の破産管財人である一審原告は、一審被告に対し、本件各定期預金契約に基づき、本件各定期預金の元本合計額五七二一万五五二六円及び右金員のうち、目録1ないし15のそれぞれにつき各元本額欄記載の金員に対する各預入日欄記載の日の翌日から平成六年五月二五日まで各利率欄記載の割合の利息の、同年五月二六日から支払済みまで商事法定利率年六分の割合による遅延損害金の支払いを求める。
二請求原因に対する認否(一審被告)
1請求原因1の事実は認める。
2同2の事実のうち、榮高が一審被告との間で本件各定期預金契約を締結したこと及び榮高が右各定期預金通帳及び銀行届出印鑑を保管していることは認め、その余の事実(本件定期預金の名義に関する事実は除く。)は知らない。
榮高の預金名義に付加されたマンション名の記載は、榮高自身のための備忘的「メモ書き」であって、一審被告は、榮高のみの名義の預金とマンション名がメモ書きされた榮高の預金とを区別することなく、同一の顧客番号で管理していたのであり、マンション名のメモ書きには法的な意味は認められない。
3同3の主張は争う。
本件各定期預金は、榮高が区分所有者から支払いを受けた管理委託費の剰余金を原資として榮高名義で預金したものであるから、榮高の預金である。
榮高は区分所有者から委託を受けて、マンションの清掃、設備の保守管理、定期検査等の業務を行っていたのであるから、当該委託業務の一部にすぎない金銭の出納業務のみに着目して、他に法的根拠がないにもかかわらず、榮高と区分所有者との関係を信託契約関係と解することは認められない。
榮高と区分所有者との間には業務委託契約関係があるにすぎない。
三抗弁(一審被告)
1一審被告(京橋支店取扱い)は、榮高に対し、平成三年一二月一二日、手形貸付の形態で五〇〇〇万円及び二〇〇〇万円を貸し付けた。
2一審被告は、一審原告に対し、平成四年一二月一五日到達の書面で、右貸金債権七〇〇〇万円を自働債権として、破産宣告前営業日である同年一一月二七日起算で、目録1ないし19の各定期預金返還請求債権合計七一九六万三八九三円(元金及び税引後利息の合計金額である。
ただし、目録1の定期預金については六〇三万六一〇七円を相殺の対象とした。)とその対当額で相殺する旨の意思表示をした(以下「本件相殺」という。)。
また、一審被告は、榮高に対し、榮高の普通預金口座に残金一九六万三八九三円を振り込んで支払った(以下「本件弁済」という。)。
3したがって、一審被告の榮高に対する本件各定期預金返還債務は、本件相殺及び本件弁済によってすべて消滅した。
四抗弁に対する認否(一審原告)
1抗弁1については、榮高が一審被告から昭和五八年四月一三日に二〇〇〇万円を、同年一一月二四日に五〇〇〇万円を、それぞれ借り入れ、その後榮高の一審被告に対する借入金残高が七〇〇〇万円のまま推移していることは認める。
2同2の事実は認める。
五再抗弁(一審原告)
1本件各定期預金は信託財産であるから、本件相殺は信託法一七条の適用ないし準用により無効である。
2また、本件相殺は、本件各定期預金等を対象として過去に設定された担保権(債権質)の実行行為としてされたものであるが、右のように信託財産である本件各定期預金を対象として、受益者である管理組合の承認なく、信託目的に沿わない目的で担保設定を行うことは横領行為であり、民法九〇条の公序良俗違反であって、無効である。
したがって、右担保権の実行行為としてされた本件相殺も無効である。
六再抗弁に対する認否(一審被告)
再抗弁は争う。
(原審乙、丙、丁、戊、己及び庚事件)
一請求原因(参加人ら)
1各当事者の地位は甲事件の請求原因1のとおりである。
2参加人らの地位は以下のとおりである。
(一)原審乙事件参加人アンバサダー六本木管理組合法人(以下「原審乙事件参加人」という。)は、平成五年六月二〇日に設立されたアンバサダー六本木マンションの管理組合法人である。
(二)原審丙事件参加人アルベルゴお茶ノ水管理組合法人(以下「原審丙事件参加人」という。)は、平成五年一月一八日に設立されたアルベルゴお茶ノ水マンションの管理組合法人である。
(三)原審丁事件参加人ルイマーブル乃木坂管理組合法人(以下「原審丁事件参加人」という。)は、平成五年一月一九日に設立されたルイマーブル乃木坂マンションの管理組合法人である。
(四)原審戊事件参加人ジャルダン元麻布管理組合(以下「原審戊事件参加人」という。)は、昭和五四年六月ころ分譲されたジャルダン元麻布マンションの管理組合であるが、管理組合法人ではない。
(五)原審己事件参加人アルベルゴ上野管理組合法人(以下「原審己事件参加人」という。)は、平成五年五月一八日に設立された豊栄アルベルゴ上野マンションの管理組合法人である。
(六)原審庚事件参加人赤坂ベルゴ管理組合(以下「原審庚事件参加人」という。)は、昭和五二年ころに赤坂ベルゴ豊栄マンション(地下一階地上一〇階建て)の三階以上を区分所有権の対象として分譲されたマンションの管理組合であるが、管理組合法人ではない。
3榮高は、平成四年一一月まで、参加人らのマンションの建物の区分所有等に関する法律(以下「区分所有法」という。)上の管理者かつ管理会社としての地位にあった。
この時期において、参加人らの組合員である区分所有者は、管理規約の定めるところに基づき榮高と管理委託契約を締結し、これらの規約及び契約に従って榮高名義の各マンションごとの普通預金口座に、毎月、管理規約に定められた管理費、修繕積立金及びその他の費用を振り込んで支払っており、また、管理費三か月分の保証預り金を右口座に振り込んで預け入れた(なお、赤坂ベルゴ豊栄マンションについては、管理費等のほか、右マンションの敷地の一部が借地であるため、借地料を付加して支払っていた。)。
榮高は、この預金口座から管理に必要な費用を支払い、また榮高としての管理報酬を受領し、管理費の剰余金、修繕積立金及び預り保証金を定期預金にした。
本件各定期預金の原資も右のようなものである。
4以下のような理由により、本件各定期預金は参加人らに帰属すると考えるべきである。
(一)区分所有法上の管理者である榮高は、区分所有法における区分所有者の規約自治に基づく委託の趣旨から、管理費等は他人の財産として管理することを義務づけられており、現に榮高は、各マンションの管理費等については、計算書類上他人の資産として扱い、各マンションの区分所有者の共有財産として個々に区分けした専用の銀行口座で管理し、担当責任者の意識も他人の財産として扱っているというものであった。
(二)一審被告も、本件各定期預金が右のような性格の預金であることを、預金名義人に付された肩書(榮高の名義のほかにマンション名が付されている。)、榮高の管理会社としての業務の内容、取引に当たって取得し、確認していた榮高の財務諸表や計算書類から、熟知していた。
(三)預金者の認定基準として最高裁判所が採用する「客観説」の立場は、「自ら出捐し、自己の預金とする意思で銀行に対して本人自ら又は使者・代理人など預金をすることを依頼した者を通じて預金契約をした者を預金者とする。」というものである。
本件においては、出捐者である区分所有者らに「自己の預金とする意思」があったかが問題となるが、管理費等が普通預金口座に入金された後に、管理会社である榮高が定期預金にする場合にも(この時点で管理会社の不法領得の意思の実現行為があれば別段)、管理会社は、そのマンションの管理受託者としての地位からして、その職務に基づきマンションの住民達のために管理保管するべく定期預金への預入行為を行っているのであって、この預入行為は、マンションの住民達の管理費等を銀行預金の形で管理する総意に基づくものであるといえるから、出捐者である区分所有者団に本件各定期預金に関する「自己の預金とする意思」が存在することには問題がない。
(四)区分所有法上の管理者は、マンションの管理に関する限りは、対内的にも対外的にも区分所有者のためにだけ権限を行使する者でしかありえない存在である。
すなわち、管理者は、その職務に関し対外的行為を行う代理権限を有するが、同時に、その職務に関し対外的行為を行う場合には、区分所有者を代理する行為でしかありえない。
そして、マンションの管理費等の保管のための預金行為は、管理者としての職務行為以外のなにものでもないのであるから、それは区分所有者のための行為であり(またそれでしかなく)、したがってその法的効果は本人である区分所有者の団体に及ぶのであり、預金債権は当然に区分所有者の団体に帰属するのである。
より端的にいえば、管理者の職務に関する行為は、あたかも団体の代表機関のごとく「区分所有者の団体」(区分所有法三条)の行為そのものということができる。
そして、管理者がその職務上保管している管理費等は、「区分所有者の団体」自体が保管しているのであり、これについて管理者の独立した占有管理ということさえ認められない。
5本件各定期預金(目録2ないし4の定期預金を除く。)は、以下の各参加人に帰属する。
(一)目録1、7及び14の各定期預金乙事件参加人
(二)目録12の定期預金丙事件参加人
(三)目録8ないし11の定期預金丁事件参加人
(四)目録6の定期預金戊事件参加人
(五)目録5及び15の定期預金己事件参加人
(六)目録13の定期預金庚事件参加人
6参加人らは、一審被告に対し、本件各定期預金の元本相当額の不当利得返還請求権を有している。
すなわち、一審被告は、本件各定期預金が実質的に参加人らの財産(区分所有者らの合有ないし総有財産)であることを認識していたにもかかわらず、本件相殺をして本件各定期預金を受領したものであって、これは、参加人らの損失において債権回収を図り利益を享受したというべきであり、また、一審被告には右受領につき悪意又は重大な過失があるから、右の利得は法律上の原因がなく、不当利得となるものというべきである。
7よって、参加人らは、一審原告に対し、主文第三項ないし第八項の各1のとおり本件各定期預金債権が各参加人に属することの確認を求め、一審被告に対し、本件各定期預金契約に基づく預金返還請求権又は不当利得返還請求権に基づき、主文第三項ないし第八項の各2の金員の支払いを求める。
二請求原因に対する認否(一審原告)
1請求原因1ないし3は認める。
2同4、5について
本件各定期預金は、甲事件において主張したとおり、榮高がマンションの区分所有者から委託され、受益者を参加人らとする信託財産である。
3同6は争う。
三請求原因に対する認否(一審被告)
1請求原因1は認める。
2同2、3は知らない。
3同4、5は争う。
本件各定期預金は、榮高が自らの預金として預け入れたものであって、その預金者は榮高である。
(一)榮高は、分譲マンションの管理業務を行う会社であり、分譲マンションの各区分所有者との間で管理委託契約を締結し、管理業務を行っていた。
参加人らのマンションの各区分所有者も、管理規約を承認の上、右管理委託契約に基づき管理費、修繕積立金等を榮高に対して継続的に支払っていた。
そして、榮高は、管理委託契約に基づき各区分所有者から受領した金銭の処理、収納、保管という経理業務を委託されるとともに、受領した金銭をマンションの修理、設備の保守点検、清掃等の費用に充当して委託されたマンションの管理業務を行い、さらにそれらの業務を行う報酬として管理費総額の一五パーセントの管理報酬を各区分所有者から受領していた。
区分所有者は、管理費等をマンション所在地付近の金融機関に開設された榮高名義の普通預金口座に振り込んで支払っていたが、その残高がある程度多額になると、榮高は、榮高名義で、右普通預金口座が開設された金融機関の支店とは全く別の場所にある一審被告京橋支店等に定期預金として預け入れていたのであり、昭和六〇年ころまで右定期預金を自社の資産として決算書にも計上していた。
右のような事情からすれば、区分所有者から榮高に支払われる管理費は、榮高が管理委託契約に基づき業務の処理を行うのに必要とされる費用及び管理報酬に充当されるもので、榮高は、管理委託契約に基づく事務処理に要する費用の前払いとして区分所有者から管理費を受領していたということができる。
したがって、榮高が管理委託契約に基づき委任された管理業務を継続している限りは、そもそも管理費の清算やその結果として剰余金がある場合の残金の返還は認められず、具体的に金額の確定していない清算後の残金返還請求権も発生していないといえる。
そうすると、区分所有者が支払った管理費は、榮高がその支払いを受けるために自社名義で開設した普通預金口座に振込送金された段階で榮高に帰属するということができる。
また、区分所有者は、管理費以外の積立金等についても、管理費と区別することなく一括して榮高名義の右普通預金口座に振込送金していたのであるから、これらを管理費と区別して取り扱う理由はない。
本件各定期預金は、榮高が、区分所有者らから自社名義の普通預金口座に振り込まれた管理費等を自社が受け取るべき管理報酬とも区別することなく、その裁量により自社の取引金融機関である一審被告らに定期預金として預け入れたものであり、既に自社に帰属していた金銭を定期預金という商品で運用したにすぎない。
(二)預金者の認定について、純粋な客観説が判例となっているわけではないが、仮に客観説に従って本件各定期預金の預金者を認定したとしても、預金者は榮高であると考えられる。
区分所有者らは、居住マンションの修繕積立金等を自動引き落とし等の方法で榮高名義の銀行口座に振り込む場合に、その口座からさらに榮高がどのような資金運用をするかについてまで具体的には把握していないのであり、またそのような資金がいかなる金融機関においてどのような方法で管理されているかまで関心を寄せていないのが通常であるから、そのような区分所有者らが、本件各定期預金について「自らの預金とする意思」で預金契約をしたものと考えるのは困難である。
区分所有者らは、榮高が、具体的に、いつ、いかなる金額について定期預金を設定するかについての情報を事前に知らされているわけではなく、またそれらの預金がどのように解約され使用されるかの詳細を逐次知らされているわけでもないから、単に預金の原資の「出捐者」であるとの一事をもって、区分所有者らを預金者と認定することはできないはずである。
4同6は争う。
第四証拠(省略)

理由

一甲事件並びに乙、丙、丁、戊、己及び庚事件の各請求原因
の1の事実、別紙預金目録記載の各定期預金がされていることは当事者間に争いがない。
また、弁論の全趣旨によれば、乙、丙、丁、戊、己及び庚事件の請求原因2の事実が認められる。
二本件各定期預金の原資、預金者の名義、管理状況等については、以下の事実が認められる。
1参加人らのマンション、コート蒲田、高島平グロリアハイツ及び白金台グロリアハイツの管理規約及び各区分所有者と榮高との間の管理委託契約書において、管理費等について、次のとおり定められていた(甲第五号証の一ないし九)。
(一)各区分所有者は、建物共用部分及び土地の通常の管理費を負担する。
この負担は、管理員人件費、損害保険料、エレベーター設備その他機械の定期保守費及び動力費、廊下灯等の電力料金及び電球の取替費、共用部分の水道・光熱費、管理委託報酬、その他共用部分の維持管理に要する一切の費用である。
管理費は、毎月、管理者に支払う。
管理費の剰余金は管理預り金として積み立てる。
不足した場合はそれを取り崩して充当できる。
(二)各区分所有者は、毎月、修繕積立金を管理者に支払う。
修繕積立金は、一定の方法で積立て、管理者がこの管理に当たり、理由の如何を問わず払い戻さない。
修繕積立金を取り崩して修繕費に充て、なお不足する場合は管理者は追加徴収することができる。
(三)各区分所有者は、保証預り金として、管理費及び修繕積立金月額の三か月分に相当する額を建物引渡しを受けたときに管理者に預け入れる。
保証預り金は、建物引渡し日から五年後又は各区分所有者がその資格を失った場合に無利息にて返還する。
区分所有者が管理委託契約に基づき管理者に債務を負担している場合は、管理者は任意に保証預り金をもって区分所有者の債務の弁済に充当できる。
(四)庚事件参加人のマンション(赤坂ベルゴ豊栄)は、敷地の一部が借地であったため、同マンションについては、区分所有者は、以上の費用のほか借地料を毎月管理者に支払う旨定められていた。
(五)給湯設備のあるマンションでは、各区分所有者は、毎月、給湯基本料金を管理者に支払う。
(六)竣工から一定期間は榮高が管理者になるものとする。
任期満了に際して特に集会の決議によって解任されない場合は、任期はそのまま更新継続するものとする。
管理者(榮高)の行う業務の範囲は、建物、その敷地及び付属施設の管理並びに環境の維持に必要な一切の業務であるが、その中には、経理事務として、管理費、修繕積立金、保証預り金、借地料及び給湯基本料金(以下、これらを併せて「管理費等」という。)の金銭の処理、収納保管が含まれている。
2榮高では、各マンションの所在する場所の近くの金融機関に榮高名義の普通預金口座を開設し(参加人らの平成九年一月二八日付け準備書面によれば、アンバサダー六本木はさくら銀行六本木支店、アルベルゴお茶ノ水は住友銀行神田支店、ルイマーブル乃木坂は三菱銀行六本木支店、ジャルダン元麻布はさくら銀行八重洲口支店、アルベルゴ上野はさくら銀行上野駅前支店、赤坂ベルゴはさくら銀行赤坂支店である。)、区分所有者は管理費等をこの口座に振り込んで支払った。
右普通預金口座には、他のマンションの管理費等や榮高固有の資金等は一切入金されなかった。
榮高は、この普通預金口座から管理に要する諸費用と榮高が受領すべき管理報酬を支出し、管理費の残余金(剰余金)や修繕積立金等が一定金額に達したときにこれを定期預金にしていた。
本件各定期預金はこのような管理費の剰余金や修繕積立金等を原資として、各マンションごとに別個の預金として、開設されたものである。
なお、通常の修繕の費用は前記の「共用部分の維持管理に要する一切の費用」として管理費から支出されるが、大規模な修繕を要する場合には、管理組合の総会の決議(管理組合がない場合には全区分所有者の賛否を問い、三分の二程度以上の賛成による。)を経て修繕積立金を取り崩して修繕費用に充てることとしていた。
また、大規模な工事を実施する場合には、区分所有者の負担を少なくするために、管理預り金(管理費積立金ともいう。)を修繕積立金に振り替えることも行われていた。
修繕積立金に振り替えられると、その使途が大規模な修繕の費用のためだけに限定されることになる。
(甲第二三号証、当審証人b及び同cの各証言、弁論の全趣旨)
3目録1ないし11の定期預金及び目録15の定期預金につい
ては、以下のとおり、その書替前の預入時等に作成された書類の預金者の名義の欄にマンション名が付記されていたことが認められる。
(一)目録1の定期預金
当初昭和五七年八月三〇日に預け入れられた定期預金が書き替えられたものであるが(乙第四号証)、右同日付けの定期預金印鑑届の「おなまえ」欄には、「株式会社榮高代表取締役d」との記載のほかに、「アンバサダー六本木」とゴム印を押捺したと思われる方法によって付記されており(乙第九号証)、昭和五八年四月一四日付けの定期預金担保差入証(兼記入帳)の「おなまえ」欄にも「株式会社榮高代表取締役e」との記載のほかに「アンバサダー六本木」と手書きで付記されている(乙第二二号証)。
(二)目録2の定期預金
当初昭和五七年八月三〇日に預け入れられた定期預金が書き替えられたものであるが(乙第四号証)、右同日付けの定期預金印鑑届の「おなまえ」欄には、「株式会社榮高代表取締役d」との記載のほかに、ゴム印を押捺したと思われる方法によって「コート蒲田」と付記されており(乙第八号証)、昭和五八年四月一四日付けの定期預金担保差入証(兼記入帳)の「おなまえ」欄にも「株式会社榮高代表取締役e」との記載のほかに手書きで「コート蒲田」と付記されている(乙第二二号証)。
(三)目録3の定期預金
当初昭和五七年八月三〇日に預け入れられた定期預金が書き替えられたものであるが(乙第四号証)、右同日付けの定期預金印鑑届の「おなまえ」欄には、「株式会社榮高代表取締役d」との記載のほかに、ゴム印を押捺したと思われる方法によって「高島平ハイツ」と付記されている(乙一二号証)。
(四)目録4の定期預金
当初昭和五七年八月三〇日に預け入れられた定期預金が書き替えられたものであるが(乙第四号証)、右同日付けの定期預金印鑑届の「おなまえ」欄には、「株式会社榮高代表取締役d」との記載のほかに、ゴム印を押捺したと思われる方法によって「白金台グロリアハイツ」と付記されている(乙六号証)。
(五)目録5の定期預金
当初昭和五七年八月三〇日に預け入れられた定期預金が書き替えられたものであるが(乙第四号証)、右同日付けの定期預金印鑑届の「おなまえ」欄には、「株式会社榮高代表取締役d」との記載のほかに、ゴム印を押捺したと思われる方法によって「アルベルゴ上野」と付記されている(乙第一一号証)。
(六)目録6の定期預金
当初昭和五七年八月三〇日に預け入れられた定期預金が書き替えられたものであるが(乙第四号証)、右同日付けの定期預金印鑑届の「おなまえ」欄には、「株式会社榮高代表取締役d」との記載のほかに、ゴム印を押捺したと思われる方法によって「ジャルダン元麻布」と付記されている(乙第一〇号証)。
(七)目録7の定期預金
当初昭和五八年八月三一日に預け入れられた定期預金が書き替えられたものであるが(乙第四号証)、同日付けの定期預金印鑑届の「おなまえ」欄には、全部が手書きで「株式会社榮高アンバサダー六本木」と記載されている(乙第一四号証)。
(八)目録8ないし11の各定期預金
当初昭和五七年八月三〇日に預け入れられた定期預金が書き替えられたものであるが(乙第四号証)、右同日付けの定期預金印鑑届の「おなまえ」欄には、「株式会社榮高代表取締役d」との記載のほかに、ゴム印を押捺したと思われる方法によって「ルイマーブル乃木坂」と付記されており(乙第七号証)、昭和五八年四月一四日付けの定期預金担保差入証(兼記入帳)の「おなまえ」欄にも「株式会社榮高代表取締役e」との記載のほかに手書きで「ルイマーブル乃木坂」と付記されている(乙第二二号証)。
(九)目録15の定期預金
当初昭和五八年八月三一日に預け入れられた定期預金が書き替えられたものであるが(乙第四号証)、同日付けの定期預金印鑑届の「おなまえ」欄には、全部が手書きで「株式会社榮高アルベルゴ上野」と記載されている(乙第一三号証)。
(一〇)なお、目録12ないし14の各定期預金は、昭和五六年一二月四日(目録12及び13の各定期預金)又は昭和五四年一一月一二日(目録14の定期預金)に預け入れられたものが一旦解約されているが(乙第四号証)、解約前の「預金担保付借入申込書」の榮高の控えには、「おなまえ」欄に「株式会社榮高代表取締役e」との記載のほかに、手書きで「アルベルゴお茶の水」(目録12の定期預金の解約前のもの)、「赤坂ベルゴ」(目録13の定期預金の解約前のもの)、「アンバサダー六本木」(目録14の定期預金の解約前のもの)とそれぞれ付記されている。
また、当審証人b及び同cは、榮高がマンションの管理費等を原資とする定期預金をする際には、必ず預金名義にマンション名を付記していたと証言しており、甲第四八号証(豊栄土地開発の財務部社員であったfの陳述書)には、榮高が一審被告京橋支店で開設した各マンションごとの定期預金については、他のマンション又は榮高の固有資産との混同を避けるために、「(株)榮高○○マンション(口)」というようなマンション名を入れた預金名義にした、との記載がある。
これらの証拠と右(一)ないし(一〇)に認定した事実を併せ考えると、少なくとも書き替えられる前の当初の時点では、本件各定期預金を含め右のような榮高の定期預金の預金者の名義には各マンション名が付記されていた可能性が大きいということができる(もっとも、一審原告作成の調停申立書である丙A第二号証の一には、管理費の剰余金及び修繕積立金は適宜定期預金に振り替えられていたが、右定期預金については、「株式会社榮高」、「株式会社榮高○○マンション口」、「○○管理組合管理代行株式会社榮高」、「○○管理組合理事長○○○○」といった四種の名義が併用されていた、とあり、必ずマンション名が付記されていたとは限らないと思われる。)。
4さらに、マンションの管理費の剰余金等を原資として榮高がした定期預金の名義については、以下の事実も認められ、多くの定期預金についてマンション名が付記されていたことが裏付けられる。
(一)平成四年八月三一日に一審被告(京橋支店取扱い)に預け入れられた定期預金の定期預金通帳の名義は「株式会社榮高アンバサダー六本木代表取締役e」となっており、その定期預金印鑑届の「おなまえ」欄には「株式会社榮高代表取締役e」との記載のほかに、手書きで「アンバサダー六本木」と付記されている(甲第二五号証、丙B第一号証、乙第二一号証)。
(二)平成四年八月二八日に一審被告(京橋支店取扱い)に預け入れられた定期預金の定期預金通帳の名義は「株式会社榮高赤坂ベルゴ代表取締役e」となっており、その定期預金印鑑届の「おなまえ」欄には「株式会社榮高代表取締役e」との記載のほかに、手書きで「赤坂ベルゴ」と付記されている(甲第二六号証、乙第一五号証)。
(三)平成四年八月二八日に一審被告(京橋支店取扱い)に預け入れられた定期預金の定期預金通帳の名義は「株式会社榮高荻窪マンション代表取締役e」となっており、その定期預金印鑑届の「おなまえ」欄には「株式会社榮高代表取締役e」との記載のほかに、手書きで「荻窪マンション」と付記されている(甲第二七号証、乙第一八号証)。
(四)甲第三〇号証の一の「預金担保付借入申込書」には、目録12ないし14の各定期預金の解約前の預金のほかに、「参宮前」と付記された預金も記載されている。
(五)甲第三〇号証の二の一審被告宛ての「預金担保付借入申込書」の「おなまえ」欄には、「新都心マンション」、「北千住マンション」、「アルベルゴ上野」、「池ノ上グロリアハイツ」との付記がある。
ただし、これらの預金についての昭和五八年一一月二四日付け「定期預金担保差入証(兼記入帳)」(乙第二四号証)には、これらの付記はない。
なお、右の「新都心マンション」と付記された定期預金の定期預金証書(甲第二九号証)には、「株式榮高新都心マンション」と記載されている。
(六)甲第三〇号証の三の「預金担保付借入申込書」の目録3の定期預金には「高島平ハイツ」と、目録4の定期預金には「白金台グロリアハイツ」と、目録6の定期預金には「ジャルダン元麻布」といずれも手書きで付記されている。
また、このほかに、「狛江マンション」と付記された定期預金が記載されている。
ただし、これらの預金についての昭和五八年一一月二四日付け「定期預金担保差入証(兼記入帳)」(乙第二三号証)には、これらの付記はない。
(七)乙第一七号証の平成四年八月二八日付け「定期預金印鑑届」には、「株式会社榮高代表取締役e」との記載のほかに、ゴム印を押捺する方法によったものと思われる「アンバサダー麻布口」との付記がされている。
(八)丙C第一号証の一審被告(京橋支店取扱い)の定期預金通帳(平成四年八月二八日預け入れ)には「株式会社榮高元麻布代表取締役e」と記載されている。
この定期預金の「定期預金印鑑届」(乙第一九号証)にも、「おなまえ」欄に手書きで「元麻布」と付記されている。
(九)平成四年八月三一日付け「定期預金印鑑届」(乙第二〇号証)には、「おなまえ」欄に手書きで「コート蒲
田」と付記されている。
(一〇)丙F第二号証の一審被告(京橋支店取扱い)の定期預金通帳(平成四年八月二八日預け入れ)には「株式会社榮高赤坂ベルゴ代表取締役e」と記載されている。
(一一)調査嘱託の結果によれば、榮高の破産前に管理組合が結成されていたため、破産前に榮高から定期預金等の返還を受けたマンションの定期預金の名義は、次のようなものであったことが認められる(ただし、これらは、いずれも、一審被告への預金ではない。)。
(1)上福岡グロリアハイツ(丙A第七ないし第一〇号証)
「上福岡グロリアハイツ管理組合」(さくら銀行積立預金及び太陽神戸三井銀行積立預金)
「上福岡グロリアハイツ管理組合管理代行(株)榮高」(協和埼玉銀行定期預金)(2)アルベルゴ武蔵小山(丙A第一二号証)
「アルベルゴ武蔵小山管理組合代表c」
(3)啓明宮前橋マンション(丙A第一五、一六号証)
「啓明宮前橋マンション管理代行(株)榮高」(城南信用金庫)
(4)アンバサダー調布(丙A第一八ないし第二〇号証)
「豊栄アンバサダー調布管理組合理事長g」(富士銀行積立式定期預金及び定期預金)
(5)アンバサダー洋光台(丙A第二三号証)
「株式会社榮高アンバサダー洋光台」(さくら銀行定期預金)
「株式会社榮高洋光台口」(三井銀行定期預金)
(6)アンバサダー横浜松見町(丙A第二四号証、第二六号証)
「アンバサダー松見町管理組合管理代行(株)榮高」(協和銀行定期預金)(7)浦和ときわマンション(丙A第三一号証)
「カ)エイコウウラワトキワマンション」(武蔵野銀行定期預金)
5榮高では、第一〇期(昭和五九年九月一日から昭和六〇年八月三一日)までの決算報告書においては、各マンションの管理費の剰余金等を原資とする定期預金を貸借対照表の資産の部に計上し(ただし、各マンション名を付記していた。)、各マンションの保証預り金、積立金、駐車場積立金、管理金預り金等を「マンション管理預り金」として貸借対照表の負債の部に計上していたが(甲第六号証の一ないし四)、顧問の公認会計士からそのような経理処理は適切ではないとの指摘を受けて、第一一期(昭和六〇年九月一日から昭和六一年八月三一日)からの決算報告書では、右定期預金を資産として計上せず、「マンション管理預り金」も負債として計上しないこととした(甲第一一号証、第一三ないし第一八号証)。
6管理委託契約においては、榮高は毎年一回八月末日に過去一年間の管理事務の決算をするものとし、その会計報告並びにその他の主たる管理事務に関する報告を一一月末日までに行うものとする、と定められており(甲第五号証の一ないし九)、榮高は、毎年、各マンションごとに「管理費収支決算書」等を作成して、全区分所有者に配布するとともに、管理組合のあるマンションについては、各マンションの管理組合の決算期ごとに各管理組合の総会において報告を行い決議を得ていた。
右書面には、管理費収支決算書、修繕積立金収支決算書及び貸借対照表が含まれており、そのほかに、マンションによっては、水道料金決算書、給湯料金決算書が含まれている。
貸借対照表の資産の部には管理費の余剰金等を原資とする定期預金も記載されている。
また、管理費収支決算書の収入の部には前期繰越金、管理費、駐車場使用料等が記載され、支出の部には管理員業務費、事務管理費、清掃業務費、エレベーター保守費等の種々の費用が記載されている。
修繕積立金の収入の部には前期繰越金、修繕積立金のほかに定期預金利息が計上されており、支出の部には修繕工事の費用が計上されている。
(甲第七号証の一ないし九、第四六、第四七号証の各一、二、丙A第一号証の一ないし三、丙D第一号証の一ないし三、第二号証の一ないし九、丙E第一、二号証、当審証人cの証言、弁論の全趣旨)
なお、甲第七号証の一ないし九の中の貸借対照表は、本件相殺及び本件弁済後の平成四年一一月三〇日現在で作成されているために、本件各定期預金のうちにはこれらの貸借対照表には記載されていないものがあるが、本件各定期預金が記載されているものは以下のとおりである。
すなわち、甲第七号証の三には目録3の定期預金が、第七号証の四には目録4の定期預金が、丙D第一号証の二には目録5及び15の定期預金の合計額である四八八万六三〇七円が、丙D第一号証の三には目録15の定期預金が、甲第四七号証の一、二(丙E第一、二号証)には目録12の定期預金が、それぞれ記載されている。
7甲第二三号証、第三五号証、第三八号証の二、第三九号証の一ないし五、丙A第二号証の一、丙F第五号証、当審証人b及び同cの各証言並びに調査嘱託の結果によれば、以下の事実が認められる。
(一)榮高は、マンションに管理組合が結成され、あるいは管理組合法人が設立されて、管理組合又は管理組合法人から管理費等を原資とする榮高名義の預金の名義変更を求められたときは、これらの預金は管理組合等に帰属する預金であるとの考えのもとに、これに応じて、管理組合等の理事長名義に名義を変更し、印鑑を変更していた。このようなマンションはかなりの数にのぼった。
管理委託契約を解除されたことに伴い、管理組合に預金を返還した例もある。
(二)平成四年一一月六日、新聞等で榮高の親会社である豊栄土地開発の自己破産の申立の事実が報道されたところ、同日以降、榮高が管理していた三四のマンションのうち、管理組合が結成されていた一八のマンションの管理組合の代表者等が榮高の本社事務所を訪れるなどして、管理委託契約の解除を通告し、管理費等の交付を要求した。
榮高は、管理費等が入金されていた定期預金及び普通預金の通帳と榮高の届出印を押捺した預金払戻票又は口座解約届を交付したり、あるいは右預金口座から払い戻して保管していた現金をそれぞれ交付した。
榮高としては、これらの預金は各マンションの資産であり、返還の要求があれば当然これに応じなければならないと認識していたものである(なお、丙A第二号証の一の調停申立書には、榮高は管理組合代表者等の要求に抗することができないまま預金等を交付したとの記載があり、右申立書において一審原告は、右交付は破産法七二条四号に該当する、と主張しており、丙F第五号証の榮高の代表者の破産裁判所宛ての陳述書にも、榮高の社員は預金通帳の返還要求に抗しきれず、一時パニック状態になってしまった、との記載があるが、右丙F第五号証には、返還した預金通帳は管理組合や区分所有者に実質上帰属すると思われるとの記載があり、榮高がこれら預金は管理組合ないし区分所有者に帰属するものであると考えていたことは明らかである。)。
(三)また、榮高の総務及び経理担当の取締役であったcは、豊栄土地開発の破産申立によって榮高の預金が銀行等によって差し押さえられ、マンションの管理業務に支障が生ずることを回避するために、管理組合のあるマンションの大部分について、平成四年一一月五日、
「○○管理組合代理人c」という名義の普通預金口座を開設した。
【要旨】三以上認定の事実に基づいて本件各定期預金の預金者が誰であるかを検討する。
1預金者の認定については、自らの出捐によって、自己の預金とする意思で、銀行に対して、自ら又は使者・代理人を通じて預金契約をした者が、預入行為者が出捐者から交付を受けた金銭を横領し自己の預金とする意図で預金をしたなどの特段の事情がない限り、当該預金の預金者であると解するのが相当である。
2本件各定期預金の原資である管理費等は、もとより榮高固有の資産ではなく、管理規約及び管理委託契約に基づいて区分所有者から徴収し、保管しているものであって、榮高が受領すべき管理報酬も含まれてはいるが、大部分は各マンションの保守管理、修繕等の費用に充てられるべき金銭である。
区分所有法によれば、区分所有者は、全員で、建物並びにその敷地及び附属施設の管理を行うための団体(以下「管理組合」という。)を構成するものとされ(三条)、各共有者は、その持分に応じて、共用部分の負担に任ずるとされている(一九条)。
すなわち、区分所有建物並びにその敷地及び附属施設の管理は、管理者が行うのであって、その管理の費用は区分所有者が負担すべきものである。
したがって、区分所有者から徴収した管理の費用は、管理を行うべき管理組合に帰属するものである。
管理組合法人が設立される以前の管理組合は、権利能力なき社団又は組合の性質を有するから、正確には総有的又は合有的に区分所有者全員に帰属することになる。
したがって、本件各定期預金の出捐者は、それぞれのマンションの区分所有者全員であるというべきである。
3管理費の剰余金等を原資とする定期預金は、榮高において、自己の預金、資産であるとは考えておらず、榮高はこれを各マンションの区分所有者ないし管理組合に属するものとして取り扱っていたものである。
このことは、多くの定期預金の名義に各マンション名が付記されていること、榮高の決算報告書及び各マンションの管理費収支決算書等の記載内容、榮高の破産の前及び破産の直前に管理組合に返還した定期預金もあること等の事実から明らかである。
4本件各定期預金は、榮高が、管理費の剰余金等が一定の金額に達したときに、その独自の判断と裁量でこれを定期預金に振り替えていたものである。
区分所有者は、管理費等を榮高名義の普通預金口座に振り込むだけであって、その管理費の剰余金等がいつの時点で、どのような金融機関の定期預金に振り替えられるか等の具体的な事実は認識していない。
しかし、普通預金としてよりも定期預金として保管することの方が区分所有者にとって有利であることは明らかであり、普通預金から定期預金への振替は区分所有者の意向に沿うものである。
また、区分所有者は、管理費の剰余金等が一定の金額に達すれば、これが定期預金に振り替えられることになっているという仕組み自体は知っていたものと推認される。
そして、区分所有者は、定期預金の預入から遅くとも一年以内の決算報告において、本件各定期預金がされていることを具体的に知ったのであり、区分所有者がこれに異議を述べたことを認めるに足りる証拠はないから、区分所有者は、この時点に至って、本件各定期預金をしたことを是認し、引き続き定期預金とすることを了承したものということができる。
すなわち、この時点以降、区分所有者が本件各定期預金の預入をする意思を有することが具体的に明確になったものである。
5本件各定期預金の預入行為者は榮高であるが、榮高が管理費の剰余金等を横領し自己の預金とする意図で本件各定期預金をしたことを認めるに足りる証拠はない。
本件各定期預金は、榮高の一審被告に対する借入金債務の担保として差し入れられていることは当事者間に争いがないが、この事実から直ちに榮高に右横領の意図があったと推認することはできない。
そして、区分所有者と榮高との関係(榮高は、管理委託契約に基づく受託者であると同時に、区分所有法第四節に定める管理者であり、区分所有者を代理する立場にある。)と、右に見たとおり区分所有者に預入の意思があると認められることを併せ考えると、榮高は区分所有者の使者として本件各定期預金をしたものと見るのが相当である。
6本件各定期預金の一部の少なくとも書替前の預入関係等の書類には預入人の名義として榮高のほかにマンション名が付記されているが、書替に伴ってこの名義がどのように推移したのかは明らかではない。
しかし、少なくとも、区分所有者の支払った管理費の剰余金等を原資とする定期預金の名義は必ずしも榮高名義とはされていなかったことは前記認定のとおりであり、本件各定期預金の名義は榮高であると断定することはできない。
ところで、預金者の認定については前記1の基準により判断するのが相当であり、預金の名義がどのようになっているか、銀行側が預金者についてどのような認識を有していたかは右判断を左右するものではない。
もっとも、一審被告が民法四七八条の適用ないし類推適用により本件相殺及び本件弁済が有効である旨の主張をする場合には、預金の名義等も問題になると考えられるが、本件においては一審被告はこの主張をしていない。
7以上のとおり、本件各定期預金の預金者は、各マンションの区分所有者の団体である管理組合であり、区分所有者全員に総有的ないし合有的に帰属すると認めることができる。
そして、管理組合法人と管理組合とは、法人格を取得する前後において、団体としての同一性が維持されるから(区分所有法四七条五項参照)、参加人らのうち管理組合法人が設立されている参加人は、本件各定期預金の預金者となる。
管理組合法人が設立されていない参加人は、権利能力なき社団であると認められるから、本件各定期預金について、その名において訴訟の追行ができる。
8一審原告は、本件各定期預金は信託財産であると主張する。
しかし、区分所有者は榮高との間で管理委託契約を締結し、榮高は管理費等の金銭の処理、収納保管という経理業務を受託しているが、信託法一条にいう財産権(管理費の剰余金等)の移転その他の処分をする契約がされているということはできない。
すなわち、信託法一条において明らかにされているように、信託契約には財産権変動の側面(「財産権の移転其の他の処分を為し」)とともに委任的側面(「他人をして一定の目的に従い財産の管理又は処分を為さしむる」)を含むものであるが、前記認定のとおり榮高は本件各定期預金を榮高の財産であるとは考えておらず、そのように取り扱ってもいないのであるから、区分所有者と榮高との間の契約については、この財産権移転の契機を見いだすことができないといわざるをえない。
したがって、一審原告の主張は採用することができない。
四本件各定期預金のうち、目録2ないし4の定期預金を除く定期預金については、参加人らに帰属することになるから、参加人らの一審原告及び一審被告に対する各請求はいずれも理由があり、一審原告の一審被告に対する請求は理由がない。
目録2ないし4の定期預金(独立当事者参加がされていない定期預金)については、一審原告は信託財産であると主張し、一審被告は榮高に属する預金であると主張するところ、信託財産であるとする一審原告の主張は採用できない。
そして、一審被告の主張するとおり、榮高に属する預金であるとすれば、本件相殺及び本件弁済によりその返還債務は消滅していることになる。
いずれにしても、一審原告の目録2ないし4の定期預金についての請求は理由がない。
五よって、以上の趣旨に従って原判決を変更することとし、主文のとおり判決する。

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